字の話

 字が下手です。

 なんというか、上手い下手以前に雑。「文章」を一文字一文字丁寧にゆっくりと書いていくと、すぐに「うわぁぁぁぁ」ってなります。で、チャチャチャって書いて、結局、雑な字になります。



 小学校の頃。
 教育テレビのドラマを見て皆で議論するような授業があったのですが、その時に字を綺麗に書くべきか、とか、そういうテーマになった時がありました。
 基本的に雑な上にひねくれていた自分。
 クラスメイトが「丁寧に書くべき」という論調になっていくのに対して、自分は「これから先の時代はパソコンで字を書くようになっていくのだから、字をちゃんと書くのよりも、速く文章を仕上げることに力をいれるべき」みたいな意見を出した記憶があります。
 今でもこの意見はさほど間違ってはいない気もするのですが、しかし周りの反応は「お前が言うな」だったと思います。
 字が雑な人間に「字は雑でいい」なんて言われたくはないのも分かります。
 
 また同じく小学生の頃のエピソードなのですが、宮沢賢治の手書きノートの写真が載っている本を読まされ、子供心に「どう見ても宮沢賢治は字が下手」と思ったことがありました。
 しかし、そこにあった宮沢賢治の字への評価は「味がある」という感じで、決して悪し様には書かれていませんでした。
 そもそも月に原稿用紙3000枚を書いていたという宮沢賢治。そりゃ一文字一文字を丁寧に書いていては間に合わないはず。どんなに雑な字であっても、文章が評価されれば字そのものも「味がある」と褒められるんじゃないか。と、やっぱりひねくれていた自分は、そう思った記憶があります。
 そしてそれらを言い訳にして、字を綺麗に書くことをむしろ拒否するという所にまで至っていたような気も……。

 結局、字を丁寧に書くこと無く時間は過ぎ。学生時代にタッチタイピングを覚えて以来、キーボードを叩くスピードが速くなるのに比例して、手書き文字もどんどん速く、そして雑になっていったような気がします。

 しかし。
 宛名書きの機会があるときなどに、自分の字を見てふと思うようになりました。
 下手な字だな……と。

 そしてある日。
 他の人の、上手いとは言えない字を見て思わずこう考えました。この人は、雑な性格なんだろうな……と。

 他人の字を見てそう思ったことは、自分にとって少し衝撃でした。
 字なんて読めれば雑でもいい。字の巧拙でその人の性格まで測れるものか。そう考えていました。しかし、ほかならぬ自分が、まさに字で他人の性格をイメージしたのです。
 理想として正論として、字の上手下手で人格を測るのが良い事なのか悪い事なのかはともかく。
 現実として字が下手なのはマイナスに評価されるというのを、心から理解した瞬間でもありました。
 あの時。字は「丁寧に書くべき」。雑に書いていいなんて「お前が言うな」と言っていたクラスメイトや先生は、やっぱり正しかったのではないか。そう思いました。

 しかし時すでに遅く。自分はどんどん手書きからデジタルに道具を移行させていき、年賀状の宛名などもパソコンのフォント任せ。
 文章の構想や下書きをするためにノートや筆記用具にこだわってみたことも有りましたが、最終的には機械に入力するのだから、と、結局最初から最後までパソコンで済ませるようになっていき。
 一昨年の9月にスマートフォンを導入してからは、手書き最後の牙城だった「手帳」「メモ」などもアプリに取って代わられ、書類記入くらいしか手書きをする機会が無くなりました。

 不思議なもので、こうなってくると逆に「字を書かないことへの不安」が出てきます。そうでなくとも「字は読めるけど書けない」という典型的なワープロ症候群だった事もあり、最近になって、漢字の書き取りを自主的に始めるようになりました。小学生だった頃の自分が見たら、おそらく鼻で嗤うでしょう。

 しかし。
 せっかくだから、と、スケッチブックを買って、筆ペンで漢字の書き取りをし始めたのですが。
 これが存外面白くなってきました。
 もともとが「手書きレベル1」。99から100に上げるには膨大な努力が要るのでしょうが、1から2に上げるのであればスライムを数匹倒す程度の経験値で事が足ります。一文字だけ練習し、ちょっとうまくなったと思えると、それが切っ掛けで漢字書き取りの練習自体が楽しくなってきました。気負わずにやり始めることが出来たのも大きいのかもしれません。

 そして。
 この文章を書こうと思い、先ほど「宮沢賢治の字」をググってみました。
 久しぶりに宮沢賢治の字を見て、正直に思ったことを書きます。

 丁寧ではないけれど、わりと味のある字だな……。

この記事へのコメント

  • yuki

    初コメゲット・・・でしょうか?
    新しいブログとやらは何時開設されるのだろうか・・・と思っていたら。
    とっくに開設されていたんですね。
    部屋建て終了後、表裏のブログにリンクだけ貼って寝るつもりが・・・
    うっかり頭から全部読んでしまいました。明日が休みで良かった。
    風呂と読書とこちらの記事と、どちらにコメントを入れるか悩みましたが、こちらで。

    最近、自分の字を見て思う事。雑になったなぁ、と。
    その気になればそこそこの字。
    一応、小学校時代は硬筆及び習字を習っていました。
    その甲斐あってか、小学2年生~中学3年生までの間、毎年書初め大会では何かしら賞を取っていました。
    ほぼ毎年銅賞でしたが。一度か二度、金を取った事もあったかな・・・。

    そんな感じなので、人に上手いか下手かと聞けば、下手とは言われなかったのですが。
    自分、自分の字を見る度、もやっとするんですよね。
    自分でも、上手いか下手かの二択で聞かれれば、上手い方だと思います。
    ただ、面白みが無い。お手本を元に、無難な線を選んで辿る・・・そんな感じ。
    一個一個の字のバランスは取れても、全体で見るとアンバランスな感じ。
    自分の見たくない部分が反映されてる様に感じます。

    字を書く事と、絵を描くの事って似ている・・・というか同じだと思うんですね。
    絵を描く方が、圧倒的に難しいだけで。
    文字をイメージして、その線を辿ってなぞるのが字を書く事なんだと思います。

    それが最近雑になってきている・・・。
    なんだか色々見落としている部分、忘れている部分があるんじゃないか・・・そんな不安に駆られます。
    まぁ雑になる前の字も気に入ってはないのですが。

    それはさておき。
    自分、字は綺麗な方が絶対的に良いと思います。
    でもあまりきっちり書かれた文字をみるとちょっと近寄り難い気がします。
    綺麗さよりも読みやすさ。親しみやすい文字の方が魅力的だったり。
    そういうのが味・・・なんですかね?

    長文失礼しました。コメントの長さじゃないなぁ、これ。;
    独り言にでも書けば良かっただろうか。
    2016年02月07日 02:17
  • ロキ

    >>yukiさん

    初コメありがとうございます。

    実は、このブログ、ちょっとした登録申請の許可待ちで、許可がおりたらモンハンブログの方などで告知しようかと思っていたのですが、思っていたより時間がかかっており、待っている間に記事数も増えてきました。
    このままいくと、記事の一気読みでまた睡眠時間を削ってしまう人も出るかもしれない……と、考えてモンハンブログのコメント返しの場を借りてフライング発表させて頂いたのですが……ああ、案の定……。

    それにしても、字が上手い人には上手い人なりの悩みがあるんですね。
    自分は、そもそも「なぞる」べき理想の文字の形をイメージすることが出来ていません。
    とりあえず、筆ペンの練習は少し楽しくなって来たので続けようと思っています。
    机の脇に置いてあるスケッチブックには、「モンハンブログ」だとか、あるいは「結月ゆかり」だとかの文字が延々と書き綴られているという……。
    2016年02月07日 17:55