キキさんのアルバイト 閑話休題 その2 「ハク」

自作小説「キキさんのアルバイト」 閑話休題を作成してみました。今回は、魔王の娘「ハク」のキャラクター紹介になります。 例によって、テキスト読み上げソフト「結月ゆかりEX」を使用し、朗読データもアップします。 合わせてお楽しみいただければと思います。



 キキさんが「種族:キキーモラ Lv89」であるならば。
 ハクは「種族:魔王 Lv-36」。そんな感じ。

 氷の種族のカリスマにして、人間たちからは魔王と呼ばれた母ミティシエーリの素質を引き継ぎ、「氷結晶」を作成する能力を持つ。
 美しく整った顔と、理想に近いプロポーションの肢体を持つが、腰回りが少しだけだらしないのは、あまり運動を好まないから。また、片付けなどは不得意で、自室は整理されていない私物で雑然としている。

 そんな彼女は、幼少期、母に連れられて下の大地に降りて来た。しかし行動を共にしたのは好奇心旺盛な若者たち。同じ年代の同族が彼女の周りにはおらず、母も氷の種族のまとめ役としての役目を負ったため、娘と共に過ごす時間を取ることが出来なかった。

 結局、ミティシエーリの娘はその頃に無口で引っ込み思案な性格に育ってしまう。しかもその後、氷の種族たちと下の大地の人々の戦争が始まり、殺伐とした空気の中で怯えながら過ごすのである。
 それでも彼女が氷結晶を作る才能を有していたため、母はその手ほどきをしてくれた。それが彼女とミティシエーリの数少ないコミュニケーションの機会となり、母にも褒められた氷結晶の作成は、彼女の自尊心になっていく。

 戦争の末期。
 目の前で母が勇者に討たれ、幼い魔王の娘もまた怒り狂った兵士たちに殺される寸前だった。
 しかし、何の責任もない子供を殺すことを、勇者は禁ずる。下の大地の旗頭となっていた勇者の言葉は重く、人々は魔王の娘に刃を振り下ろす事はできなかった。
 それでも魔王の娘という存在は、生き残った氷の種族が再集結するきっかけになりかねず、また下の大地の人々の不安を煽る。そのため、勇者も完全な自由を彼女に与えることは出来ず、魔王砦の跡地に幽閉し、本名を名乗ることを禁じ、ハクという名前を授けた。
 また、一人で幽閉されているとその精神に悪影響をおよぼすという考えから、勇者はハクに生きる目標となるものを与える。それはクークラという名の魔導生物であり、彼はハクにその養育を命じた。
 そして、ハクの管理を勇者後援会、後の国教会に委ねたのである。

 勇者の目論見は当たり、ハクは砦跡でクークラと共に、精神的には健全に、氷の種族との連絡もほとんど絶った生活を送る。

 時が過ぎ、勇者が行方をくらました後。

 勇者を神の御使と崇め、戦後世界の最大の権威となった国教会は、魔王の娘ハクの管理を重要な教義の一つとして位置づける。
 かつて大災害を引き起こした魔王の娘を、彼の地に封じ鎮めることは、国教会の権威を強めるための祭祀となった。

 魔王の娘を専門に扱う司教は、高い地位をいただき、祭祀のために定期的にハクのもとに赴く。
 そして、ひたすらにその心を折る。
 魔王とは絶対的に邪悪な存在である。その娘もまた邪悪である。本来ならば殺されて然るべきところを、神の御使である勇者の慈悲によって救われた。勇者を奉れ。勇者を奉れ。邪悪な娘よ。無能にして不才なる娘よ。貴様は魔王の娘としての能力を持たぬ。無為に生きよ。時の最果てに至るまで。
 
 結果として。
 ハクは自らを無能力の存在として認識するようになり、自信を失い、Lvはマイナスに向かっていく。

 そんな彼女を支えているのは、ハクを慕うクークラの存在であり、氷結晶を作る自身の能力だった。
 
 やがて国教会は、ハクの能力に注目し、氷結晶作成に当たらせることになる。
 作られた氷結晶は美しく人々の心を奪い、さらに国教会が宗教的な意味付けをして、国の王族や貴族に売り、教会の財政を大いに潤した。

 ハクは、自分が作成した氷結晶がどのように使われているのかは知らない。興味もない。
 ハクはそれを作るのを許された事を喜び、しだいに没頭し始める。
 それは自分の精神を支える誇りであったし、数少ない母との思い出でもあったから。

 余談ではあるが。
 ハクの作る氷結晶は、美しさと希少性から異常なまでに値が高騰し、国の王族や政治家、有力な資本家、そして国教会の間で奪い合いの様相を呈して、互いの摩擦を生む。やがてそれは国の亀裂となっていくのであるが……。

 それは、ハクのあずかり知らぬ事である。

この記事へのコメント

  • yuki

    閑話休題作成お疲れ様です。
    これ以外に、一体どれだけの裏設定があるのやら。

    なんだかハクさん、物凄く可哀想というか、気の毒と言うか・・・。
    クークラも謎ですねぇ・・・勇者は一体何処から彼女を連れてきたのか。
    身体を持たない魔導生物っていうのも、その辺に理由があったりするんでしょうか?

    今は自信も自由も無いハクさんですが。
    何らかのきっかけで自らの力に気付き、自信と自由を手にする・・・
    そんな未来が来るといいんですけどね。
    そのきっかけは・・・やっぱり国の亀裂とクークラの存在なのかなぁ・・・なんて思ったり。

    第2話も楽しみにしています。
    2016年02月28日 21:28
  • ロキ

    >>yukiさん

    コ……コメント返しを忘れていました。
    申し訳ありません。
    ……もう、この記事は見ていないかもしれないけど……。

    クークラに関しては、色々と設定が脳内で暴走した感じで、それは閑話休題その3で書かせてもらおうと思っています。

    問題なのは、クークラというキャラの居場所は最初からあったのに、設定は後で作られたということ。告知の時に「魔法生物」という言葉を使ったのが原因でしたが……。
    おかげで、クークラの設定をどこまで作中で活かせるのか、それがまだ自分にもわかりません。

    今のところ決まっているストーリーだと、「何にでも宿れる魔法生物」設定は出てこないんですよね……。
    2016年03月01日 07:59