短編小説『HappyHalloween』

久しぶりの休日。
モンハンブログの小説と、この作品を作るのに費やしてみました。

構想としては、9月から10月にかけて20連勤の作業中に、HappyHalloweenの絵本を作ってみたいと思ったのが最初。
MMDで絵を作って文章を入れ、最終的には第18回MMD杯に出展できれば……なんて思っていましたが、そのために作ったプロットを使って小説にもしてみました。

後から追記で、MMDで挿絵を作って挿入するつもり。

ちなみに、同じような構想の『メトロポリタン美術館』もあります。そちらも近いうち試験的に短編小説化できればと思っています。

それにしても。
久しぶりに駄文ブログを更新できました。
もっと頑張っていきたいけど、まだしばらくは忙しいのが続く……。


HappyHalloween


01.
 白い肌のエイゼルと、褐色の肌のエイゼル。
 二人とも同じ名前で、同じ角を持ち、同じ翼が生えています。
 彼女たちは悪魔。
 可愛らしい、悪魔の女の子。

 絵の大好きな女の子メルフィがスケッチブックに描いた絵の中に、お姉さんのアーネと一緒に住んでいます。

 悪魔達はお菓子が大好き。
 けれど、絵の中にはお菓子がありません。
 メルフィが絵の中に、食べ物を描かなかったのです。
 だってメルフィはまだ小さい女の子。
 自分が描いたかわいい悪魔たちが何を食べているのかなんて、普通は考えませんもの。

 悪魔たちが外に出てもいいのはハロウィンの夜だけ。
 お菓子を食べることが出来るのも、その日の夜だけ。

 ある日、エイゼルたちはお姉さんのアーネに訴えました。

「おねえちゃん!」
 白い肌のエイゼルは元気で無邪気。
 自分のほしいものも、やりたいことも、素直に口に出すタイプ。
「お腹減った!」
「……わたしも……」
 褐色肌のエイゼルは、あまり喋らず無表情。
 でも、お腹が空くのは切ない様子。

「だから、我慢しなさいと言っているでしょう!」
 お姉さんのアーネさんは、二人にピシャリと言いました。
「もう明後日はハロウィンなのだから。絵の外で一杯食べてきなさい!」
「でもでも!」
「……だって」
 反論する二人の前で、アーネはプイと顔をそむけます。
 その瞬間。

 ぐぅぅぅうーー

 アーネのお腹が鳴りました。

「お姉ちゃんも……」
「……お腹……減ってるの……?」

 アーネは顔をそむけたまま。
 でも少しだけ頬を赤らめて言いました。

「そ……それでもきちんと我慢するのが、一流の悪魔というものなのです!」

 二人はお腹が減っていたけど、もう何も言えなくなりました。



02.
 お腹を鳴らしながら、待ちに待ったその日。
 今日はハロウィン! ハッピーハロウィン!

 エイゼルたちは絵の外を、二人でキョロキョロ伺います。

 まだ夕方だけど、もう待ちきれない様子。

「ねえ、そろそろ暗くなりそうだから、もう出ちゃってもいいかしら?」
「そうねぇ……」

 アーネも、少しそわそわしています。
「そうね、まだちょっとだけ早いけど……いいわ、霧も濃くなりそうだから、もう行きましょう」

「やった!」
「……(こくり)」

 一年間、絵の中で待ち続けて甘いものを我慢していた二人は大喜び。
「みんな集まるかしら?」
「……チョコ……食べたいなぁ……」

 二人ははしゃぎながら、絵の外へと旅立ちます。

「いいこと? 朝には戻らなければいけませんからね!」

 念を押すアーネさんの声を尻目に、二人の姿はあっという間に見えなくなりました。

「さあ! 街にいこう!」
「……(コクコク)」

「本当にわかっているのかしら?」
 アーネは少し不安そうでしたが、一人になるとニンマリと笑い、
「さてと……私も……おっかしー、おっかしー。赤いキャンディ転がしてー♪」
 と鼻歌を歌いながら、絵の外へと出ていきました。

 二人が居るときにはお姉さんとして手本にならなければいけませんから気丈に振る舞っていたアーネでしたが、でもやっぱりお腹が空いていたし、ワクワクしていたんですね。



03.

 白色と褐色のエイゼルたちは、街に繰り出てトリックオアトリート。
 一つ、二つと鐘の音がなる度に、人間の子供たちも増えていきます。
 悪魔達は人間の振りをして。
 人間の子供たちは悪魔の仮装をして。
 一緒になって街を練り歩きました。

「ハッピーハロウィーン!」
 街の子供たちと一緒になって、エイゼルたちも叫びます。
「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」
「チョコもちょうだいよ」
「赤いキャンディは?」

 これほど楽しい夜はありません。
 みんなで一緒に歌って踊って、ランタンの付いている家に行ってはお菓子をもらい、くれない家はイタズラの餌食にするのです。
 庭木をトイレットペーパーでグルグル巻きにするなんて、なんて愉快なことなんでしょう。

 けれど、楽しい時間も永遠には続きません。
 
 街の子供たちも一人帰り、二人帰り、少しづつ人数が減っていきます。
 もうそろそろ戻らなければいけない時間。
 
 まだまだ遊び足りない二人でしたが、アーネさんとの約束もあります。
「でも最後の最後まで遊び尽くすわ」
「……わたしも……」
 二人がそう決意した時、後ろから声をかけられました。

「あなたたち」
「悪魔でしょ?」

 二人はびっくりしました。
 だって、悪魔であることを人間に見破られたら、すぐに逃げて絵の中に帰らなければいけないのです。
 あと少しとは言え、まだ遊んでいられる時間があったのに。
 二人は泣きそうになりました。



04.
「大丈夫だよ!」
 二人に声を欠けた双子の女の子の片方が言いました。エイゼルたちよりもちょっと年上で、ハロウィンらしく黄色と黒のパンプキンカラーの服を着ています。頭には黒い角。尖った耳をしていました。
「私達も悪魔だから」
 もう一人は黒い巻き角が生え、目玉の描かれたとんがり帽子を被っています。

「私は、トゥイードル・ディー」
「私は、トゥイードル・ダム」

「なあんだ、人間にバレたんじゃないんだ」
 エイゼルたちはホッとしました。

「わたしはエイゼル」
「……私もエイゼル」

 もう街の子供たちも全員帰ってしまいました。

「最後の一遊びをしましょう」
「……帰りたくないけど、そろそろ朝……」

 残念そうな二人に、ディーが言いました。

「あら、帰りたくないなら、帰らなければいいじゃない?」
「……え?」

 ダムも言います。
「わたしたちと一緒に、ずっと外で遊びましょう?」

「で……でも、アーネおねえちゃんが、朝には帰ってきなさいって」

「あら二人共、大人の言うことなんて聞くの?」
「悪いことをするのが、本当の悪魔の仕事なんだよ」



05.

 その日の夜から、街のどこかでお菓子が消える事件が発生するようになりました。

 そして、数日後のお昼。
 明るい陽の光を避けるため薄暗い路地に入った四人の女の子たちがお菓子を食べていました。

「美味しいね」
「……うん、美味しい」
 
 エイゼルたちが、ニコニコ笑顔でカボチャのパイを頬張っています。

「う……うん、美味しいね……」
「あ……味は……とっても美味しいね……」

 今日のお菓子は、町外れに住むお祖母さんが、孫たちのために心を込めて焼いたカボチャのパイ。
 今まで盗ってきた中で、一番愛情の篭った、一番素敵な、そして一番おいしいお菓子です。

「明日はどのお菓子を盗ってこようか!」
「……私、街なかのケーキ屋さんが良い……」

 パイを食べ終わったら、さっそく次の目標を打ち合わせ。

「じゃ……じゃあショートケーキを一つだけ……」
「う……売れ残りのでもいいんじゃないかな?」

 今までひっそりと外で生きていたディーとダムは、大胆な二人の行動がちょっと不安。

「えー! そんなのつまんない!」
 白肌のエイゼルが頬を膨らませて反対します。
「大きいホールケーキ、見つけただけ全部!」
「……あ、私は誰かのお誕生日のために作られたのが食べたい……」

「そ……そうだよね……悪魔だもんね……」
「わ……悪いことが仕事だもんね……」



05.

 そして次の日の夕方。
 ケーキ屋さんに行こうとしていた時。

 最初に白肌のエイゼルが、頬を押さえて顔をしかめました。

「なんか、ズキンズキンする……?」
「……私も……歯が痛い……?」

「え?」
「だ……大丈夫?」

 痛さに気づくと、それはドンドンドンドン強まっていきます。

「痛い、イタイ」
「イタイイタイ!」

 とうとう二人とも、うずくまって泣き出してしまいました。

「イタイーー!!」
「イタイよーー! 助けて!」
「助けておねえちゃん!」
「ごめんなさーーい!」

 その痛さときたら七転八倒。
 どんなに泣いても、のたうち回っても、薄れるどころかズキズキズキズキ。

 まだ虫歯になっていなかったディーとダムでしたが、二人の様子に驚いて、どうしたら良いのかわかりません。

「どうしよう、ダム」
「どうしよう、ディー」
「エイゼルたち、痛くて死んじゃう?」
「私達が誘ったせいで、死んじゃう?」

 せっかく友達になれたのに。
 悲しみと恐怖で、エイゼルたちよりお姉さんだった二人の眼からも涙が溢れてきました。

 その時、遠くから子供の声が聞こえてきました。



06.

「お祖母ちゃん、私にごめんなさいごめんなさいって」
「お祖母ちゃんは悪くないのに! 誰だろう、せっかく焼いたカボチャのパイを盗ったのは!」

 プンプンしながら歩いてくるのは、ハロウィンの夜にエイゼルやディー、ダムと一緒に練り歩いていた女の子たち。
 神の助けとばかりに、ディーとダムはその二人の前に躍り出て、話しかけました。

「友達が大変なの!」
「歯が痛くて死にそうなの!」
「助けて!」
「助けて!!」

 しかし、女の子達は二人に気付きもせずに行ってしまいました。

「パイを盗んだヤツなんて!」
「虫歯になって死ねばいいのに!」

 だって悪魔はハロウィンの夜以外、人間たちの眼には映らないんですもの。
 ディーとダムの必死の訴えだって、全く見えなかったし、聞こえなかったのです。

 希望を失いトボトボと、ディーとダムはエイゼルのところに戻りました。

「イタイーイタイー……!」
「歯がイタイー……!」

 二人はずっと泣いたまま。
 どうにか出来るならば、どうにかしてあげたいけれど。

 どうしようも出来ないディーとダムの眼からも涙がこぼれ落ちました。
「誰か、誰か!」
「二人を助けてあげてください!」

 その時。
 空から声がしました。

「あ! こんなところに居た!!」



07.

 空から羽音を響かせて。
 アーネさんが降りてきました。

「何をやっているのあなた達は! ハロウィンが終わるまでに帰りなさいと言ったでしょう!」
 怒っているけど、眼は真っ赤。
 二人を心配して泣いていたのは絶対に秘密。

「まったく! どれだけ探したことか!」
「おねえちゃーん……イテテ」
「……ご……ごめんなさーい……イタタ」

「それに街で噂になってるお菓子の紛失事件! あなた達でしょう! まったくとんでもない!」
「だって……だって……」
「……お腹いっぱい食べたかったんだもん……」
「悪いことをしたのは褒めてあげるけど、もしもエクソシストが派遣されたらどうするの! あなた達なんてイチコロなのよ!」
「ごめんなさい」
「本当にごめんなさい」

 エイゼル二人は泣きながら謝ります。
 でも、やっぱり歯も痛い。

「おねえちゃーーん……」
「歯が痛いの……」
「「なんとかしてーー」」
「知りません! 約束を破った罰です! 次のハロウィンまでそのままで居なさい!」
「そ……そ……」
「そんなー……」

 雲行きが怪しくなってきたのを感じて、ディーとダムは小声で「……じゃ、じゃあ」「私たちはこれで……」と言って、こっそり逃げ出そうとしましたが。
 しかしアーネは二人の首根っこを捕まえて言いました。
「私の妹をそそのかしたのはあなた達? 一緒に来なさい。事情を説明してもらいます」



08.
 
 結局、アーネに引っ張られて、エイゼル二人もディーもダムも、みんな絵の中に戻ってきました。
 メルフィがスケッチブックに描いた絵には、トゥイードル・ディーと、トゥイードル・ダムがいつの間にやら描き加えられ。
 さらにエイゼル二人のほっぺが腫れて、よく見ると眼に涙をいっぱい溜めています。

 ある日、メルフィが何気なくスケッチブックをめくっていると。
 自分が描いた絵が、すこし変化しているのに気が付きました。

 あれれ? なんだろう?
 私が描いたのよりも、絵の中の悪魔が増えている。

 それによく見ると、子供の悪魔が二人共、虫歯みたいになっている。

 メルフィは首を傾げ、まあそういう事もあるのかもしれないと思い。
 でもこのままじゃ可哀想とも思いました。

 そこで、彼女は箱からお絵かきセットを取り出してくると、上から絵の具で腫れたほっぺを修正し、涙も塗りつぶして笑顔に描き直したのでした。

「痛かったねー」
「……痛かった……」
 
 こうして、ちょっとだけ長かったハロウィンが終わりました。

「次のハロウィンが楽しみだね、ディーちゃん、ダムちゃん」
 やっと涙が止まった白色のエイゼルが言います。
「……来年も、一緒に遊ぼうね」
 褐色肌のエイゼルも、閉められたスケッチブックの中で言いました。
「う……うん。でもね、二人とも」
「今度はちゃんと時間になったら帰ろうね」
 ディーとダムは、大人の言いつけを守らない事が必ずしも格好のいいことではなかったと、やっとわかったのでした。



EDテーマ

左から
トゥイードル・ダム エイゼル(褐色肌) エイゼル(白肌) トゥイードル・ディー



おまけ
アーネさんの紹介。
知っている人は知っていると思いますが、自分がMMDでもよく使うモデル。
アーネお姉ちゃんのモデルです(そのまんま)。参考まで。

(エイゼルのプロトタイプも登場している……)

この記事へのコメント

  • yuki

    ロキさん、ロキさん!
    04.の冒頭、「エイゼル」じゃなくて「エンゼル」になっちゃってる!
    悪魔じゃなくて天使になっちゃってるよ!;

    あ、短編小説お疲れ様です。
    こういうほのぼの絵本系もいいですねえ♪
    2016年10月10日 12:19
  • ロキ

    >>yukiさん

    しまった。
    またやってしまった……。
    一応、ゆかりさんに読み上げてもらって、こういうミスは消していっているはずなのですが、やっぱりどうしても残ってしまいますね。
    本当に、いつもありがとうございます。

    それにしても、一文字違うだけで随分違ってきますね。エイゼルとエンゼル。

    ネットで発表する作品としては初(だと思う)短編小説。しかしもともと絵本という頭があるために、文章はかなり独特なものになりました。

    今回は、挿絵を作った後、久しぶりにエブリスタへ投稿しようかと思っています。

    ちゃんと宣伝もしたいけど、さてさてどうしたらいいものか。一応、エブリスタ内のサークルに登録しようかと思っていますが。
    2016年10月10日 18:50