7:59分のあずさ2号

まず。
この画像を見てほしい。

20150823azusa246.jpg

これは、7:59のあずさ2号。

この画像を見た多くの人は、こう思うだろう。
8時ちょうどじゃないのかよ! と。
あと一分ずらせよww と。

だが、聞いてほしい。

男たちの挑戦と苦闘、そして敗北を。
その証である「七時五十九分のあずさ二号」を。




……
…………

そう。
我々が思うよりも前に。
JRの職員達だって、あずさ二号は8時ちょうどにしたかった。

しかし、最適なダイヤグラムは本来7時56分。
それをなんとか8時ちょうどにしようと決意した時、彼らの闘いは始まった。

それは。

過密ダイヤにならざるを得ない、巨大な人口を抱えた大都会東京を相手に振るった、蟷螂の斧のようなものだった。

8時ちょうどのあずさ2号なんて出来るわけがない。
事情を知る人達は皆そう言って嗤った。
ムダなことはやめておけ。おとなしく、7時56分に甘んじろ。

それでも彼らは歯を食いしばった。
他の路線と協調し、調整し。
複雑にこんがらかった紐を解いていくように。

少しづつ、少しづつダイヤを改正していった。

国鉄時代にダイヤの構築と調整において「編成部の神」と呼ばれる程の手腕を振るいながら、偏屈な性格のために寂しい老後を送っていた老人に、日参の末にその信頼を得て助力を頼んだこともあった。

改正に反対する運転手組合と、深夜に及ぶ戦争にも似た編成会議を構えた事もあった。

そうやって、一分、また一分とあずさ2号の出発時間を8時ちょうどに近づけていったんだ。

だが。

現代の過密ダイヤは、あまりにも堅固な要塞だ。
数々の苦難を打ち破ってきた職員たちを相手にして。
最後まで難攻不落の要塞であり続けたのだ。

8時ちょうどのあずさ2号を目指した彼らに。
ついに敗北の時が訪れる。
彼らがたどり着いた最終地点は「7時59分」。
ついに一分。
彼らは届かなかった。
大都会東京の過密ダイヤの前に。
あと一分のところまで迫りながら。

彼らはその膝を折ったんだ。

心なき人よ。
この写真を、ただのオモシロ画像と思って見ている人よ。

君たちは嗤うがいい。

彼らは敗北者だ。
あと一歩のところで届かなかった、「7時59分」の男たちだ。

「あと一分ずらせよww」と。
ああ、嗤うがいい。

だが。
私は讃えよう。

彼らの努力と敗北を。

「7時59分のあずさ二号」を。

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