錫の酒器レビュー

 昨年末に購入した「錫の酒器」。
 遅ればせながら、そのレビューをさせて頂きます。

 ちなみに、自分のTwitterで ハッシュタグ「 #宅飲詩人 」で、酒や肴などに関して色々と呟いています(初期に抜けはあります)。よろしければそちらもどうぞ。



01.錫の酒器とは

 錫で作られた酒器にはどのような特徴があるのか。
 まずはそれから。

 錫は精錬や加工がしやすく古代から使われてきた比較的身近な金属です。銅を主体に錫を混ぜた合金が「青銅」であると言えば、どれほど昔から使われてきたかは解るでしょう。日本には奈良時代に入ってきたと言われています。

 比較的毒性が低く、腐食に強く、当時から飲食器として使われていたようです。

 酒器に使う場合の特性として、まず熱伝導性が非常に高いということと、また柔らかいということが挙げられます。
 冷酒を入れれば瞬間的に器全体が冷たくなるし、熱燗を入れると持てないくらい熱くなります。
 
 冷蔵庫に数分入れておけば、冷酒をより冷やすことが可能。
 燗をつければ、温まるまで早いです。
 また、柔らかいため、落としたり力を加えるのは厳禁ですが、しかしステンレスなどに比べると肌なじみのし易い……まさに「柔らかい」良さがあります。
 
 そして。
 酒器としての最大の効果が「味をまろやかにする」事。
 化学的なことはよくわかりませんが、イオン化傾向が高いため、不純物を取り除く効果が高いとか。そのため酒の味がまろやかになると、古来から伝えられていました。

 まあ、自分は購入する前には、エセ科学の範囲の話かと思っていましたが……。

 それは使ってみて、いい意味で裏切られることになりました。
 


02.購入した酒器

 自分が購入した錫の酒器はこちら。

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「能作」の片口(大)ぐい呑みになります。





 注ぐとまろやかになる……という説を信じるにしても、それなりの時間ためて置かなければいけないだろうと思い(実際には2~3分で良いよう)、ぐい呑みだけではなく片口も購入しました。本当は片口よりも徳利がほしいと思っていたのですが。

高い。

メッチャ高い。


 それでも少し贅沢をして片口は(大)にしてみました。

 結果としては、これは大正解でした。

 片口は徳利以上にぐい呑みに酒を移しやすく、また後で記事にしようと思いますがフグヒレなども浸しやすく。大変重宝しています。

 まだやったことはありませんが、ワインのデキャンタなどにも使えそう。

 価格は流石にそれなりに高く、自分が買ったときでも片口(大)が7,560円、ぐい呑みが3,450円。
 合計で11,010円は、酒器に払うとしては自分にとっては痛い出費です。アマゾンでポチるときにはそれなりの決意が要りました。

 が。

 今は、それだけの価値は十分にあったと思っています。



03.実際に使ってみて
 
 結論から書いてしまいますが、酒をまろやかにする効果、これは本当でした。
 少なくとも自分の舌ですらそれを感じることが出来ましたし、友人二人にガラスの酒器と較べて飲ませてみても効果があると言い切りました。
 
 自分の舌で確かめた範囲の話ですが。

 基本的に「酸味」に対して強い効果を発揮し、酒の味の中で独立して感じられた酸味が別の味と調和するような、そんな感じがします。

 また、自分の中で「水っぽい」と感じる部分が目立たなくなるようにも思いました。感覚の話なので上手く言葉にしづらいのですが。


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~~ 正月に買った金箔付きの酒 ムダだと思うが、それでもめでたい感じがするのは、自分も日本人だからか ~~


 味の変化以外にも。

 個人的に金属が持つ質感が大好きなので(それで最初に錫の酒器に興味を持った)、重みがあり光沢があり、かつ熱伝導率の高さから冷酒を入れた時のヒヤリとした感覚がありで、そのような点は非常に満足しています。

 ただし、燗酒を入れる時は要注意。
 本当に持てないくらい熱くなります。



04.実際に酒を飲んでみて

 実際にお酒を飲んでみての雑感など。

 

越後桜
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 720ml900円台から楽しめる大吟醸
 お酒のみの人には「旨味が薄い」と言われてしまうようですが、フルーティな吟醸香に、適度な辛さと飲みやすさ。上を見ればキリがないけれど、この価格帯ではかなりの良品ではないかと思っています。

 錫器で飲んだ場合、特に後味の辛味がよりスッキリする感じ。もともと飲みやすい銘柄ですが、自分の舌、および友人二人の舌でも錫器のまろやか効果は解りました。



男山 復古酒
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 元禄時代のレシピで作ったという旭川の蔵元「男山」の復古酒。
 非常に甘口。
 甘み旨味は非常に強いが、さすがにちょっとクセが強く、飲む人を選ぶ気がします。甘口好きの自分には合いましたが、日常的にこればっかり飲みたいという気にはなれませんでした。
 ちなみに、蔵元で売っている酒粕も、板状ではなく米の粒が残っていた感じ。ポピュラーな薮田式自動もろみ搾り機を使用せず、元禄時代の絞り方を再現しているのかもしれません。

 錫器で飲んでみると。
 ……全く効果なし。何で飲んでも味の違いは出ませんでした。
 これは復古酒は非常に甘味が濃い事が理由で、おそらく錫器がまろやかにするのは酸味、あるいは辛味や苦味であって、甘みには作用していないのだろうと思います。仮に作用していたとしても、これだけ甘味の濃い酒だとほとんど効果が感じられないようです。





沢の鶴 米だけの酒
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 お安く飲める紙パックのお酒。どちらかと言えば特徴の無いタイプの味で、後味にはやや苦味(雑味?)のようなモノを覚えました。
 900mlで税込み700円ちょっととコスパは最高クラス。辛いと言うほどではなく、さりとて甘口ではなく。そして割りと飲みやすく。ある意味で個性を見出しにくいお酒ではありました。

 錫器で飲んでみると、明らかに効果があり、後味の苦味が感じにくくなっていました。
 もしかしたら、錫器のせいで個性を殺されているのかもしれませんが、飲みやすくなったのは確かです。

 また、同じパック酒の小山本家「米だけの優しい思いやり」でも同じように感じました。
 ……それにしてもパック酒の名前って、なんか「最近のラノベ」感があるように感じるのは自分だけでしょうか。

 さて。

 以上のように、錫器のまろやか効果は、むしろ辛口の酒、雑味のある酒でより高い効果を発揮し、逆に甘口の酒、最初から雑味があまり無い酒には効果が薄いような気がします。

 つまるところ。

 酸味や雑味、水っぽさを軽減し、それらが強い安い酒を飲みやすくする時にもっとも効果を発揮するのではないかと。

 聞くところによると、錫器は水を美味しくし、大昔には井戸に錫を投げ込んで水を浄化させていたとか、錫の花瓶だと花が長持ちするとも聞きました。
 酒に対する効果を考えるに、個人的には信憑性があってもおかしくはないと思うようになりました。

 もっとも、最初から水の美味しい旭川では、水に関してはあまり効果を感じませんでした。

 しかし、学生時代を過ごした埼玉の水道水……埼玉県民には申し訳ないけど、非常に不味かったです、慣れたけど……などには効果があってもおかしくないと思いました。



05.錫器を購入して

 今となっては、全く高かったとは思っていません。高いところから落とすなどの強い衝撃を与えない限りは、おそらく一生モノとして使えそうな気すらします。少なくとも、味をすっきりさせる効果は、想像していたよりもずっと高いものがありました。

 それも、感じとしては安酒を飲みやすくするという、お金のない酒飲みにはピッタリな効果だったかと。

 また、購入するまで知らなかった「片口」という酒器も、今ではお気に入りになっています。形状的に、自分としては徳利以上に使いやすいと思っています。

 金属の質感が好きな自分としては、その点でも満足の行く逸品でした。



06.保管用の箱について

 おまけとして。

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 昨年末。
 ちょっと高いお酒を購入しました。
 自分は道民ですが、初めてとなる「高砂酒造」のお酒。
 大吟醸国士無双木箱入りのお酒。
 
 年の瀬に美味しいお酒を飲んでみたかったというのも去ることながら、目的だったのはこの木箱。

 永く使おうと思った錫の片口とぐい呑みの保管用にしよう……と、思ったのですが。


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 は……入らない……。

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 入らない……。

 うーん……何かいい入れ物に、運命的に出会うことはないだろうか……と、思っています。

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